Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Read 新・水滸伝 (しん・すいこでん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 684,899 characters · 1374 screens
「さ、どうぞお一杯。そして心からおくつろぎくださいまして」
「眼が眩みそうなご馳走だな。どうも近頃のわが輩には、もったいない」
「恩人さまに、こんな流浪のお苦しみをかけたのも、思えば全く私ども父娘のためで」
「よしてもらいたいな、いちいち恩人さま恩人さまといわれちゃあ、なんだか酒も美味くなくなるじゃないか」
「はいはい。もう申しませんが、もひとつだけ、いわせていただきます。あれ以来は、紅紙のお牌にお名前をしるし、朝夕お線香を上げて娘と拝んでおりました。ですから今日のご縁も、神仏の巡り合わせと思わずにおられません。のう翠蓮、おまえもこんな欣しいことはあるまい」
「なんといっていいんでしょう。私はもう、何だか、泣けて泣けて……」
「こりゃあいかん。お志は万々うれしいが、翠蓮のシュクシュクだけは、わが輩、ご馳走にいただきかねる」
「ま、ごめんなさい。ほんに涙はお嫌いでございましたのにね。もう欣し泣きもいたしませんから、陽気にお過ごしあそばして」
ところが、やがて黄昏れ近い頃、戸外でがやがや人騒ぎが聞えだした。風の音にも心をおく身、魯達が窓から下をさし覗くと、手に手に棍棒などを持った若者二、三十人をひき連れて、馬に乗った長者風の一人物が、しきりと妾宅の内外を窺っている。