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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
まちがいはないか」
「かれは蜂須賀彦右衛門の甥ですし、いささか義に感じて、わたくしに仕えおるもの、そのへんの儀は」
「でも、万一があってはなるまい。賞はとらすが、体はこの城内にとめおいて、事のすむまで、監禁しておいたがよかろう」
「いけません」
「なぜ」
「そういう人使いをいたしますと、次の大事の機会には、もうこんどのように、死に身になって働こうという気が出なくなります。――また、かれの人間は信じぬが、功によって、賞は与えるというような扱いをすると、何かの折、敵から莫大な利を喰らわせると、それに心がうごくようになりましょう」
「では、どこへ留めおいたか」
「さいわい、ゆうも戻るところでしたから、於ゆうの女駕籠を守ってまいれといいつけ、長亭軒の城のほうへ送りつかわしました」
「夜を日についで、甲州より帰って来たとあれば命がけ。その者に、そちはすぐ、自分のおんなの送りをいいつけたのか。――それで天蔵は、そちを恨まぬのか」
「よろこんで附いて参りました。おろかな主人でも、私というものを、よく知っていてくれますから」
「そちの人づかいは、ちと信長とちがうようだな」
「なお、安心なことは、女子ながら、ゆうの側におけば、もし天蔵がひとへ機密をもらすが如き気ぶりでも見えれば、すぐ刺し交えてでも守りましょう。