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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens
信長は、情報を聞くと、
「公方どのの顔がみたいな」
一笑を、洛中に向けて、そこへは一日も軍を停めず、大坂へ出てしまった。
ふいを衝かれたのは石山本願寺である。にわかに信長の軍を迎えて、なすところを知らなかった。
しかし、信長は、
「いつでも叩くぞ」
と、いう陣容だけを示すにとどめている。兵力の消費は彼のいまもっとも避けようとしているところだった。そしてこの間に、使者はたびたび京都へ出向いている。
この正月、信長よりさしあげた十七ヵ条の意見書にたいするお答えは如何? ――であった。
またそれには、強硬な最後通牒の意味もある。
義昭としては、将軍家という司権者の立場から、自分の諸政にたいする信長の意見書などに、耳をかす気もなかった。けれどただ十七ヵ条のうち二箇条だけは、強硬に迫られると、困る問題だった。
それは第一条の、
――武門棟梁の職にあって、王城のもとに館居しながら、朝廷に参内もせず、王事をかえりみぬ不臣の罪。
と、第二条の、
――天下の泰平をはかり治安民福を任とする位置にありながら、諸国へ密使を通わせ、みずから乱をつくるなど大政輔弼の身にあるまじき狂態。