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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,841 characters · 376 screens

Aozora Bunko

「藤吉郎、そちはまず、身軽に先へいそいで帰れ。――いずれ信長も、近日のうちに、そちの横山城へ臨むであろうから」

信長のささやきに、

「では、お越しを、待ちあげまする」

と、それだけで、以後の方針はのみこんでいるらしく、藤吉郎は義昭の子を、若江の城へとどけるとすぐ、兵一小隊をつれて、まっ先に、近畿の戦場から北近江の横山へひっ返していた。

信長が岐阜へ帰ったのは、七月の末。

月をこえるとすぐ、横山から早打で、

――機は熟しました。いざ。

と、出馬の催促状が、藤吉郎のまずい自筆で届いて来た。

北越の山ざかいを越え、雲の峰のくずるるような大軍が、残暑の七月、梁ヶ瀬から田神山を経、余吾、木ノ本のあたりへ濛々と陣地を構築していた。

越前兵。

いうまでもなく一乗ヶ谷から出てきた朝倉義景の大軍だった。

この七月末。

北近江の聯盟国、小谷の浅井久政、長政父子から、一鞭の飛信があって、

「――織田の大軍が、続々北上して来る。いそいで援軍あれ。もし救援がおそいと、当城のささえもおぼつかない」

と、あったので、

「よもや?」

と、評議では疑うものもあったが、何せよ盟約のてまえ、