Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,903 characters · 400 screens

Aozora Bunko

ゆめ疑うな。足軽、草履取の末とても、勇みよろこび候え」

声はその位置から遠い足軽草履取の端にまでよく届いた。死せる如くみな呼吸をとめていた。――が、この一呼吸の後にあらわれたものは、歓びでもなく、喊呼でもなく、哭くが如き蒼白な戦慄と無言の硬直であった。

内蔵助は、眼を閉じてなお一倍、われをも励ますかのように叱咤に似たことばで告げた。

「今日を措いてあるまじき日はまさに明けようとするぞ。手柄あれ各※(二の字点、1-2-22)。侍分にはわけても恃み参らすぞよ。よし斃るるも、兄弟子ある者には、跡職の儀は申すに及ばず、兄弟子なき者どもとて筋目筋目の縁を尋ね出し、後々の跡目恩賞は決して相違あるものではない。尤も働きの高下にはよるが」

終りに至って、内蔵助の語気は著しく昂らなかった。これはもとより光秀の命による布告で、彼としては何となく、自身の心にそぐわぬものがあったのではあるまいか。

「いざ、渡れ」

天はまだ暗い。

桂川の流れは、一時、徒渉の陣馬の堰にせかれて、対岸まで幾条となく白々と逆捲いた。

振り返れば、もう桂川の中には、余している人数もない。

濡れ草鞋を踏み叩いて、全軍は身ぶるいした。