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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 200,903 characters · 400 screens

Aozora Bunko

元祐の妻

何とぞ弥九郎の生涯を、不足なく使いきったと後に思し召すように、充分お召しつかい下さいまし」

「承知したか」

「何のかのと、自分の申し分ばかり云いたてて恐れ入りました」

「左様なこと詫びるに及ばん。随身のうえは、早速にも、そちに命じることがある。いわば奉公始め。弥九郎。まず一働きしてみせい」

元祐の妻

小西屋弥九郎は、暇を乞うていちど岡山へ帰った。けれどまたすぐ帰陣して、その日から秀吉に仕える身となった。

小西弥九郎行長とみずから称え、ここに一かどの侍になったが、弥九郎は、髪も姿も、前の町人作りのまま、秀吉の命をうけて、間もなくどこかへ立ち去った。

数日の後、彼は、日幡城の中にある竹井惣左衛門の邸へ、客として訪れていた。

密談半夜に及んで、そっと城中から帰った。

惣左衛門は、軍目付上原元祐の家老である。弥九郎が去ると、ひそかに元祐の前に出て、

「昵懇の小西弥九郎ともうす者がぜひお取次ぎを得たいとて、夜前、この一書をたずさえて手前を訪ねてまいりました。一応、殿のお目にだけは入れておくと答えて帰しましたが」

云いながら、ふところから秀吉の書簡を出して、元祐のまえに供えた。