Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 176,911 characters · 353 screens

Aozora Bunko

紺糸の黒皮のよろい、白地きんらんの陣羽織、かぶとは鹿の角の前立ち、それを背投げに負い、頭は、なお癒えぬ戦傷を、まるで白頭巾のように、頬へかけて、巻いていた。

かれは、徳川勢の追躡を知ると、ただちに、生牛ヶ原に休めていた第二隊を挙げて、家康ここにあり――と、さし招いている、ふじヶ根山の金扇をにらんで、堂々たる決戦の意志を、それへ返してゆく歩武に示していた。

「不足のないあいて」

かれは何度も云った。

「――羽黒の不覚、そそぐも今日、おれのみならず、舅どのまでの名折れを、ぬぐうて見せるも、目前の一戦にある」

左右の旗本に、そんな述懐も、もらした。かれが抜け駈けの功を剋ちそこねた羽黒村の不覚な一戦は、そのとき五体にうけた手傷以上に、かれの心を、さいなんでいる。

きょうを雪辱の日となす気が――白布につつまれた眉に見える。燐となって、白い炎をたてているように見える。

美男であり、勝入の姫とのあいだには、ほのかな恋のうわさまで立って夫婦になった彼として――きょうの死装束は、あまりにも悽愴すぎる。

けれど、美男のかれを、鬼とよぶ、いわれは世間になく、かれ自身の性情のうちにあるにちがいない。