Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens

Aozora Bunko

良人はそういって立った。夫人はたいへん安心した。彼女は、斯波家の臣、高島左京大夫のむすめで、利家に嫁いだのも、その仲人は、まだ小身時代の、秀吉寧子の夫婦だったのである。

当時、女性でも禅に参ずるものが多く、彼女も、大徳寺玉室の室に参じ、後には、芳春院と称されている。――で、彼女はすぐ覚ったのである。良人が、天に順うのみ、といったことばを。

天佑とは、要するに、大いなる天運に順うことで、天の運行に、逆うことでないことと解している。

その考えは、利家の深意に中っていた。利家の進退はまさにそれだったといえる。

前田陣の前衛は――いや中軍の近くまでも、敗走して来る佐久間勢の喚きや血まみれを容れて、見るまに、砂塵の渦となり、濛々たる凄色にくるまれた。

「あわてるな。みぐるしい」

騎馬一団の士たちと共に、ひとしくこれへ退いて来た玄蕃允は、手綱の一方もちぎれている朱の鞍から跳び降りると、叱咤にしゃ嗄れた声をしぼって、

「何だ、これしきの戦に」

と、みずからをも励ますように、眼にさわる者どもを、悉くたしなめた。

――がさすがに。

どか、とそこらの岩に腰を落すと、焔のような息を肩でついた。