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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens
「笠を被ぎ、蓑など携えている村人の老幼男女があれに見える。後に、褒美をつかわすゆえ、渡せと申して、笠や蓑をある限り集めて来い」
といいつけた。
そして、やがて、黒鍬の兵が集めて来たそれを、手負いの一人一人に、覆い着せてやるのを見届け、初めて、
「よし、よし」
と、気がすんだような顔をして、進軍をつづけて行ったというのである。
麾下諸将がようやく疲れを思い、空腹を覚え出していたとき、彼はなお人心の収攬をわすれず、戦後に思慮をめぐらしていたと、この逸事を説く者もあるが、さてどうであろうか。
秀吉の真情は、負傷者の苦痛を、いかに急場といえ、路傍に見て行けなかった。ただそれだけの凡情であったと観た方が、日頃の彼の性格に近いと思う。
――ともあれ、秀吉主力の湖西進撃軍と、堀秀政以下の湖東留守居軍とは、柳ヶ瀬山地に入る北国街道の路上で、完全な聯繋を見、同時に、
「勝家、討死。――勝家以下の重なる部将も、あらまし斬り死を遂ぐ」
との喧伝もあって、ここでも一時、万雷に似た歓喜を発したのであった。
しかし、勝家戦死は、誤報である由が、すぐ訂正された。
勝家の帷幕にあり、越軍の名だたる武将のうちの、国府尉右衛門、吉田弥惣、太田内蔵助、小林図書、松村友十郎、浅見対馬守入道道西、神保若狭、同八郎右衛門などが、狐塚から柳ヶ瀬の突地にわたる