Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens

Aozora Bunko

大慈悲

「御母堂にも、寧子どのにも、宵よりいたくお待ちかねでおられます。ともあれ奥へ渡らせられ、殿のお健やかぶりもお見せ申しては」

三好武蔵守一路は秀吉の姉婿である。この人なのでこう奨めもできるのだった。首を突っこむように家臣と膝を交えていた秀吉は、今は夜半かと初めて気がついたように「ウム」と頷き、頷くやいな起ち上がって、

「あすは皆、存分に休めやい。腹いっぱい正月せい」

と、云い残して奥へ入った。

大慈悲

奥へ渡れば奥にも、彼を待つ老母や妻や姪や義妹らが、寝もやらずいた。

揃って手をつかえる顔、顔、顔――の出迎えを秀吉はまばゆいような眼と微笑にうけて通った。そして老母の前に出て、

「この正月、ようやく寸暇を得ましたので、ちょっと御拝顔にもどりました」

と、まず何より先の対面をした。

下坐について、母を拝す秀吉の姿は、さながらこの老母がいまもって口癖にいう「あの子」そのものであった。

ふくよかな白絹の頭巾の中に、老母の面は、いわずしてもういう以上の欣しさを綻ばせていた。

「越し方、並ならぬ御苦労、わけて去年は、やさしいものではなかったのう。――が、ようぞ怺えなされた。