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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 187,757 characters · 375 screens
「明日は上洛する」
と、物頭どもへ、足もとから鳥の立つように、準備をうながしていた。
「これは何としたこと」と毎度のことながら、人々はその急なるにまたまたあわてた。
少なくも今度は、中旬ぐらいまでは在国であろうといわれ、事実、秀吉の容子にも、その日の昼まで、出立の風は見えなかったのであるから、諸士が不意をくったのも無理はない。
後日になっては、さてはそういう仔細かと、人々にも頷けたことだったが――それには、こういう動機があり、機を外さない秀吉が、即刻、それに対して動き出たものなのである。
関盛信なる一将がある。
これは伊勢亀山の城主で、神戸信孝に仕えていたが、夙に、誼みを秀吉に通じ、伊勢ではかくれもない“異心のある者”と見られていた。
ほかにも、同じ鈴鹿郡の峰ノ城代岡本重政がやはり睨まれていたし、かたがた神戸信孝の岐阜失陥にも衝動されて、同国の形勢は、頓に騒然たるものがあったらしい。
ところが、この正月。
亀山の関盛信は、一子一致を伴れて、そうした四囲険悪な中を、ひそかに姫路へ来て、年賀を兼ね、かつ、爾後の策を仰いでいた。
そこへ早馬が来たのだった。