Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Read 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,813 characters · 302 screens
私がよく言って聞かせるのは、ここだぞよ。お前は独子(ひとりっこ)で我儘(わがまま)放題に育って、恐いというものを知らねえからしてに――自分さえよければ他はどうでもよい――それが大間違だ、とよく言うじゃねえかよ。お前の父さんも若(わけ)い時はお前と同じ様に、人を人とも思わねえで、それで村にも居られねえような仕末。今すこしで野たれ死するところであったのを、漸(やっ)と目が覚めて心を入替(いれけ)えてからは、へえ別の人のようになったと世間からも褒められている。その親の子だからしてに、源さも矢張(やっぱり)あの通りだ、と人に後指をさされるのが、私は何程(どのくれえ)まあ口惜(くやし)いか知んねえ」
と母親(おふくろ)は仰(あおむ)きながら鼻を啜(すす)りました。
ややしばらく互に黙って、とぼとぼと歩いてまいりますと、やがて蕎麦畠(そばばたけ)の側(わき)を通りました。それは母親と源とお隅の三人で、しかも夏、蒔(ま)きつけたところなんです。刈取らずに置いた蕎麦の素枯(すがれ)に月の光の沈んだ有様を見ると、楽しい記憶(おもいで)が母親の胸の中を往ったり来たりせずにはおりません。