Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Read 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 149,813 characters · 302 screens
己がこれ程言うじゃねえかよ。己を助けると思って、機嫌克(きげんよ)くして行ってくれ。なあ、一生のお頼みだに」
お隅は口を噤(つぐ)んで了う。源はぶつぶつ言いながら、馬を引いてまいりました。
筒袖の半天に股引(ももひき)、草鞋穿で頬冠りした農夫は、幾群か夫婦の側を通る。鍬(くわ)を肩に掛けて行く男もあり、肥桶(こえたご)を担いで腰を捻(ひね)って行く男もあり、爺(おやじ)の煙草入を腰にぶらさげながら随(つ)いて行く児もありました。気候、雑草、荒廃、瘠土(やせつち)などを相手に、秋の一日(ひとひ)の烈しい労働が今は最早(もう)始まるのでした。
既に働いている農婦も有ました。黒々とした「のっぺい」(土の名)の畠の側を進んでまいりますと、一人の荒くれ男が、汗雫(あせしずく)になって、傍目(わきめ)もふらずに畠を打っておりました。大な鋤(すき)を打込んで、身を横にして仆(たお)れるばかりに土の塊を鋤起す。気の遠くなるような黒土の臭気(におい)は紛(ぷん)として、鼻を衝くのでした。夫婦は他(ひと)の働くさまを夢のように眺め、茫然(ぼんやり)と考え沈んで、通り過ぎて行きましたのです。