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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Read 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,283 characters · 329 screens
晩年の菊五郎
初陣の不覚は生涯附き纏うものだと、むかしの武士は言い習わしているが、わたしの初陣は実にかくの如き不覚を以て終始したのである。その不覚のいつまでも附き纏うのは是非ないのであろう。その時代から数えるとすでに三十余年、劇場内外の形勢は著るしく変わった。勿論、今日でも種々の弊習や欠点はあるが、その当時に比較すれば、大体においては夜と朝ぐらいに違っていると言ってよい。そのときに私たちが貰った上演料は、四幕に対して五十円であった。後に聞けば、内部では三十円ぐらいでよかろうという説であったのを、それでは余りに気の毒だと言って、井上氏が特に五十円にしてくれたのだとかいうことであった。座附の狂言作者らがわたしたちの脚本上演に対して不満を懐いていたのは事実で、素人の書いたものを無条件で採用するならば、われわれの書いたものも今後は続々上演してくれと迫って、井上氏を頗る困らせたという噂を聞いた。
晩年の菊五郎
明治三十六年は明治の劇界に取って最も記憶すべき年であらねばならない。明治二十年の井上外務大臣邸における演劇天覧と、三十六年における団菊両優の死と、この二つの事件は明治の演劇史に特筆せらるべき重要の記録である。