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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 215,744 characters · 434 screens
道行の二人連れ、さしずめ清元か常磐津の出語りで『落人の為かや今は冬枯れて』とか云いそうな場面です。誰の考えも同じことで、この榛の木を目当てに『辿り辿りて来たりけり』という次第。何しろここで心中をするのだから、それだけじゃあ済みますまい。お芝居の紋切り型で『抑や初会の其の日より』なぞと、口説き文句も十分にあった事と察せられます。
お若と徳次郎はそこらに人が忍んでいようとは夢にも知らないで、色模様よろしくあったのですが、暗やみで其の口説き文句を聴かされている武助はやりきれません。すっかり気を悪くして癪にさわった。おまけに一杯機嫌ですからなお堪まりません。もう一つには、ここで二人にごたごたされていては、自分の仕事の邪魔になる。かたがた不意に飛び出して、斬るぞと嚇かしたので、二人は驚いて逃げる。そこへ為吉と藤助が来る、庄太とわたくしが来る。いや、もう、大騒ぎで、何もかもめちゃくちゃになってしまいました。
武助は事面倒と見て、一旦は姿を隠したのですが、なんだか不安心でもあるので、そっと引っ返して来て窺っていると、お若と徳次郎は送り還されて、これから為吉と藤助の詮議が始まりそうになったので、為吉の口から詰まらないことを喋られては大事露顕の基と、だしぬけに斬って逃げたのです。