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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
連れ出されてお北はうかうかと佐藤の屋敷へ入り込むと、待ち受けていたお近はさらに彼女を奥の古土蔵のうちへ案内して、そこに押し籠めてしまった。自分の手もとに監禁して置けば、お北と幸之助の逢う瀬は絶えると思ったからである。
こうした悪業がそれからそれへと続くので、祐道ももう決心した。彼は妹が自分の寺へ来たのを捕えて、おまえのような悪魔はしょせん救うべき道はないから、どうでも自首して出ろと厳重に云い渡した。もし飽くまでも不得心ならば、帝釈が阿修羅の眷族をほろぼしたと同じ意味で、兄が手ずから成敗するからそう思えと、怒りの眼に涙をうかべて云い聞かせた。その決心の色が凄まじいので、お近も一旦は得心して、あしたは兄に連れられて奉行所へ自首して出ると答えた。
それでもまだ不安であるので、祐道は妹にむかって、その覚悟が決まった以上はふたたび佐藤の屋敷へ帰るな、今夜はこの寺へ泊まって行けと命令すると、お近は承知して泊まったが、果たして夜なかにそっと抜け出そうとしたので、大かたそんな事であろうと内々警戒していた祐道は、すぐに追いかけて庭さきで取り押さえようとした。たがいに世間を憚るので、なんにも口を利かなかったが、その無言の争いのうちに兄はいよいよ決心のほぞをかためて、阿修羅をほろぼす帝釈となった。