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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
五
親不孝な野郎だ」
「おい、お仙。傘を出してくれ」
半七は立ちあがって帯を締め直した。
「どこへ行くの」
「しん吉のおふくろに逢って来る」
「親分。怪談を真に受けて行くのかえ」と、幸次郎は半七の顔をみあげた。
「真に受けても受けねえでも、ちっと思いあたることがある。おれの帰るまで、おめえ達は待っていてくれ」
降りしきる雨の中を、半七は隣り町へ出て行った。
五
その明くる朝、半七は八丁堀同心の屋敷へ顔を出して、かくかくの次第で四、五日は江戸を明けると云うことを届けた上で、朝の四ツ(午前十時)頃に府中をさして出発した。幸次郎も善八も一緒に出た。
幸いに強い雨ではなかったが、きょうもしとしと降りつづいている。先度の小金井行きとは違って、三人は雨支度の旅すがたで、菅笠、道中合羽、脚絆、草鞋に身を固め、半七はふところに十手を忍ばせていた。道順も先度とは少し違って、上高井戸から烏山、金子、下布田、上布田、下石原、上石原、車返し、染屋と甲州街道を真っ直ぐにたどって、府中の宿に行き着いたのは、七ツ半(午後五時)を過ぎる頃であった。
宿屋は先度の柏屋で、三人はここに濡れ草鞋をぬぐと、顔を見おぼえている宿の者は丁寧に案内して二階座敷へ通した。