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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
その以上のことは番頭も知らないらしかった。しかしそれだけの事を偶然に聞き出したのは、意外の掘出し物である。江戸城へはいりこんだ本人は川越の次郎兵衛でなく、宇都宮の粂次郎であるらしいが、いずれにしても笠の持ち主を見つけ出せば、それからひいて其の本人を突き留めることも出来る。半七はよろこんで万屋の店を出た。
四月になって、番太郎の店でも焼芋を売らなくなった。駄菓子とちっとばかりの荒物をならべている店のまえに立つと、要作は町内の使で何処へか出たらしく、女房のお霜が店番をしていた。それを横目に見ながら、半七は隣りの自身番へはいると、定番の五平があわてて挨拶した。
「早速だが、ここの番太の夫婦はどんな人間ですね。川越の生まれだそうですが……」
「へえ」と、五平は俄かに顔を曇らせた。「なにかのお調べですか」
「御用だ。正直に云ってくれ」
「要作は三十一で、女房のお霜はたしか二十八だと思います。川越の者に相違ございません」
「要作には次郎兵衛という弟があるそうだね」
「要作の弟ではございません。女房の弟だと聞いていますが……」と、五平はいよいよ迷惑そうな顔をしていた。
自身番の者も城中の一件を知っているのである。