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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
こうなっては逃げるすべもない。彼は無言の半七に引き摺られて、二、三軒さきのうす暗いところへ連れて行かれた。
「やい、しん吉、てめえは太てえ奴だ。坂町の伊豆屋の女房をかどわかして何処へやった。さあ、云え。てめえは伊豆屋の女房と諜し合わせて、自分は前から釜屋に待っていて、闇祭りのくらやみに女房を連れて逃げたろう。おれはみんな知っているぞ、どうだ」
しん吉は黙っていた。
「それにしても、伊豆屋の女房をどこへやった。もう三十八の大年増だ。まさかに宿場女郎にも売りゃあしめえ。あの女房をどこへ葬ったよ」
しん吉はやはり答えなかった。彼は一生懸命に半七を突きのけて又逃げ出そうとするのを、背後からどんと突かれて、往来のまん中へ比目魚のように俯伏して倒れた。
「縄にしますか」と、幸次郎はしん吉の襟首を捉えながら訊いた。
「むむ。柏屋へ連れて行け。逃がすな」
縄つきのしん吉を幸次郎に預けて、半七と善八は友蔵の家へむかった。暗いなかにも目じるしの槐の大樹のかげに隠れて、二人は内の様子をうかがうと、内には女の忍び泣きの声がきこえた。毀れかかった雨戸の隙間から覗くと、うす暗い行燈の下に赤裸の女が細引のような物にくくられて転がされていた。