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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,831 characters · 396 screens
松蔵のような悪い奴に魅こまれましたのも、やはり仏罰であろうかと思われます」
祥慶は数珠を爪繰りながら暫く瞑目した。うしろの山では鵙の声が高くきこえた。
「そのうちに延光は歿しました。そのあとに俊乗が直りますと、今度は俊乗を相手にして、松蔵は時々に押し掛けてまいります。俊乗は年も若し、根が正直者でござりますから、松蔵のような奴に責められて、ひどく難儀して居るようでござります。わたくしも可哀そうに思いましたが、どうすることも出来ません。そこへ又ひとり、悪い奴があらわれまして、いよいよ困り果てました」
「その悪い奴は女ですかえ」と、半七は、喙を容れた。
「はい。お歌と申す女で……」と、老僧はうなずいた。
お歌は花屋の定吉の姉娘であった。父の定吉も妹娘のお住も正直者であるのに引き換えて、お歌は肩揚げのおりないうちから親のもとを飛び出して、武州、上州、上総、下総の近国を流れ渡っていた。彼女は若粧りを得意として、実際はもう二十四、五であるにも拘らず、十八、九か精々二十歳ぐらいの若い女に見せかけて、殊更に野暮らしい田舎娘に扮していた。男に油断させる手段であることは云うまでも無い。