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きのこせっぽう
木の子説法
泉 鏡花
Read 木の子説法 (きのこせっぽう) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,107 characters · 34 screens
静寂、深山に似たる時、這う子が火のつくように、山伏の裙を取って泣出した。
トウン――と、足拍子を踏むと、膝を敷き、落した肩を左から片膚脱いだ、淡紅の薄い肌襦袢に膚が透く。眉をひらき、瞳を澄まして、向直って、
「幹次郎さん。」
「覚悟があります。」
つれに対すると、客に会釈と、一度に、左右へ言を切って、一樹、幹次郎は、すっと出て、一尺ばかり舞台の端に、女の褄に片膝を乗掛けた。そうして、一度押戴くがごとくにして、ハタと両手をついた。
「かなしいな。……あれから、今もひもじいわ。」
寂しく微笑むと、掻いはだけて、雪なす胸に、ほとんど玲瓏たる乳が玉を欺く。
「御覧なさい――不義の子の罰で、五つになっても足腰が立ちません。」
「うむ、起て。……お起ち、私が起たせる。」
と、かッきと、腕にその泣く子を取って、一樹が腰を引立てたのを、添抱きに胸へ抱いた。
「この豆府娘。」
と嘲りながら、さもいとしさに堪えざるごとく言う下に、
「若いお父さんに骨をお貰い。母さんが血をあげる。」
俯向いて、我と我が口にその乳首を含むと、ぎんと白妙の生命を絞った。ことこと、ひちゃひちゃ、骨なし子の血を吸う音が、舞台から響いた。