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むらいちばんそうけいせん
村一番早慶戦
佐々木 邦
Read 村一番早慶戦 (むらいちばんそうけいせん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,468 characters · 34 screens
気がついたときはもう晩かった。原口君が信用がないとすれば、原口君に引き廻される僕も信用がない次第だ。社長令息が何かの問題について、
「親父が然う言っていたよ」
とお株を出した時、
「お母は何と言っている?」
と原口君が聞いたのだそうだ。それも食堂で満座の中だったから、以来社長令息は原口君を睨んでいる。原口君自らは一向平気だ。喧嘩が元来好きだと言っていた。僕が東金君との経緯を打ち明けたら、
「それは面白い。一臂の力を貸そう」
と申出てくれたが、決して出世の足しになる人でない。却って一緒に首になる心配がある。
一年間は何事もなかった。東金君は社長令息のお取巻きになって、ゴルフや麻雀の勉強をした。附き合いが張るから丁度俸給ぐらい取寄せると言って零していた。お互は決して疎隔しない。知らないものからは親友に見える。しかし時折心の中が外に現れるのか、話が皮肉になる。
「緒方君、君、一遍社長令息のところへ伺候しないか?」
「さあ」
「令息は君に興味を持っているよ」
「何とか言っているのかい?」
「うむ。頭の巨い奴の御機嫌を取っている奴は何処の馬の骨だって」
「成程。原口君と交際するのが気に入らないんだね」