Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens

Aozora Bunko

通信科の居住区は、丘の頂上近くにある。暗い歩き難い山道をのぼりながら、私は空をあおいだ。参差する梢のために、星も見えなかった。

「まだ上の方かね」

「もうすぐです」

少し広い道に出て、梢が切れた。片側が崖になり、暗い海の展望があった。微かな風が私の瞼にあたる。海の向うにはくろぐろと鹿児島の市街があり、そのひとところが赤い焔をあげて燃えていた。疲労した私の眼に、その火の色は此の世のものならぬ不思議な色で、とろとろと静かに燃えていた。

「毎晩、ああやって燃えているのです」

変に感動しながら、私は兵のその言葉を聞いた。

狭い道に降り、そして居住区についた。崖下の洞窟より一回り小さい入口が、やはり竹や樹で小うるさく擬装してあって、電線が岩肌を何本も這って居た。壕はU字形をしているらしかった。身体をかがめて入って行った。

壕の一番奥は送信所になっていて、発電機とか送信機がごちゃごちゃ置いてある。そこで電信の先任下士官などに会い、あいさつをした。送信所に到る通路が、いわば居住区の形で、寝台や卓子が並んでいた。その一つの卓に瓶を置いて、準士官が一人酒を飲んでいた。骨組みは太そうだけれど、肉付きの薄い、通信科の軍人に特有の青白い皮膚をした顔の、こけた頬の上に赤く濁った眼がぎろりと私にそそがれた。