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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
洋服の裁ち方が、モナリザのきている洋服と同じである。此の不思議な女人が私達の前にいて、かけつけ三杯だからなどと不思議な言葉を使って酒をすすめた。言葉に微かに北陸なまりがあった。
黙って注がれるままに飲んでいると、やがて体中がじんじんと快よく熱くなり出した。お昼に御飯を食べたきりだから、酒のまわりが早かった。そのうちに白けたように見えた座も段々賑やかになって来て、お酒を啜る音や箸が皿にあたる音がしだした。私は不味い焼竹輪をむしゃむしゃ食べながら、酒をぐいぐいほした。一座は皆下宿人らしかった。皆落着かない顔をして飲んでいる。だんだん話し声がしだした。
私の右手にすわっていた帝大生が、突然手をにょきにょき伸ばして、私の左にいる天願氏の方に盃を差出した。
「天願さん。飲みましょう。どうせ今夜は勉強が出来ないんだから」
やけで、飲むぞと言う声がした。誰が言ったのか判らない。言った人のむしゃくしゃした気持は私にもよく判った。天願氏が盃を受け取ったら、学生は徳利をとって注いだ。天願氏は年かさだし、ぶらぶら遊んでいるけれど何処か尊敬されていると見える。
しかし、盃に酒を注ぐ操作が私の眼の前で行われている。