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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Read 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,810 characters · 345 screens
それに、豆人形の着るような小さい小学生の小倉の上着がかかっている。それがぶわぶわとうごいた。
風がまだ吹いているなと私は思った。雨戸を鳴らさない所を見ると、幾分弱まったものと思われた。私はだるい体を起した。ふらふら立ちながら、雨戸をあけ放った。明るい日射しがさっと部屋に入って来た。私は眼をぱちぱちさせながら窓側に腰を下した。
もう昼はとっくに廻って居るらしかった。風物がみんな長い影を引いて、気のせいか夕暮に近いように見える。巷のざわめきがここに伝わって来る。豆腐屋のラッパが、空気を細長く切りながら聞えて来た。
今日も学校に出なかった! 胃のあたりににがさを感じながら私は呟いた。こういう生活を毎日つづけて一体どうなるのだろう。
天願氏の乱れた髪が枕の上にかぶさっている。体が小さいので布団がぺしゃんこになって見える。ぼろ屑を捨てたようにたよりない寝姿を見ているうちに、次第にわけの判らぬ憎悪を感じて来た。その憎悪は何か親近な感情に裏打ちされて、濁っている。その事が二重になって私の嫌悪をそそった。
ここにぼろぎれのように眠る男も、やはり此の身を苛なまずしては生きて行けない生活をしている。