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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,181 characters · 219 screens
二
あんまり草臥れて、ガッカリした時には、急に礼なぞは出てこないのかも知れません。
「わたしの家へお寄りになるんなら、こっちよ」
そういうわけで私は、碌々礼もいわずに、この娘の後に跟いていったのです。
二
今度は娘の後からついて行きますと、草むら隠れに小径がうねうねと、そのうちに山に囲まれたこんな無人の地帯には珍しい、白砂利の陽に燦めいたまるで都会のような道路へ、出て来ました。
そして、どこからその道が曲ったのか? いつか、御影石を敷き詰めて枝も撓わに、五月躑躅の両側に咲き乱れた、広い道路を上った小高い丘の中腹には、緑の山々を背景にした立派な家が、聳え立っているのです。豪壮というよりも、瀟洒といった方が、いいかも知れません。
大きな門柱から鉄柵が蜿蜒と列なって、その柵の間から見えるゆるやかな斜面の庭には遥かの麓まで一面の緑の芝生の処々に、血のように真赤な躑躅や五月が、今を盛りと咲き誇っています。眼も絢な芝生の向うには、滴らんばかりの緑の林が蓊鬱と縁どって、まるで西洋の絵でも眺めているような景色でした。家の右手の方もまた、一面の芝生に掩われて、処々に蔓薔薇の絡みついた白ペンキ塗りのアーチや垣根が設けられて、ここにも白やピンク、乳白、紅、とりどりの花が一杯に乱れています。