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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
Read 武装せる市街 (ぶそうせるしがい) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 115,959 characters · 234 screens
玉田は笑った。西崎の助平は有名なものだった。おかしいヒョウキンな奴だ。
彼は、支那へ来たからには、チャンピーの味をみたいと望んでいた。それは、来る前からの望みだった。作業中にも、纏足の前がみをたらした、褐色や紫の支那服を着た女が通ると、そッとそれをぬすみ見た。手や脚が、とてもきゃしゃだった。
工場の函詰の女工にも彼の心はひかれた。
それは、美しくはなかった。ホコリと、煙と、燐に汚れていた。しかし、それは、日本人とは、どこかちがっていた。ちがった何ものかを持っていた。
ちがったものが彼に刺戟となった。
「何かやってるぞ、おい、工場の奴が、何かやってるぞ。」
飯を食って暫らく休んでいた。一人が、削った軸木を乾してある附近の騒ぎに目をとめた。工人が、思いきったいじめ方をされている。
「リンチだ、リンチだ!」
内所ごとのように柿本が声をひくめた。
「なに?」
「リンチだ、リンチだよ!」
于立嶺という、肩の怒った、皮肉な顔つきの工人が、二人の把頭の腕の下で、頸をしめられた雄鶏のように、ねじられて、片足は、しきりに空を蹴っていた。
「監督が、爪の裏へ針をつき刺しているんだ。