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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
Read 江戸の火術 (えどのかじゅつ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,929 characters · 36 screens
貴公の大筒俺の焔硝
その灯の漏れたのは、秋葉山の奥の奥、門桁山寄りの密林に囲まれた山の上で、人間などの滅多に近寄らぬ神秘境に、素人細工で建てた荒木の小屋でした。
「御主人、獲物は罠に落ちましたぞ」
外から声を掛けるのは、半十郎を引立てた三四人の武士、
「それは辱けない」
中から一刀を提げて全身を現わしたのは、思いの外の若い男、灯に背いた小袖の折目も正しく、山家住居の者とは見えぬ物腰です。
「それでは、これにて御免蒙る、――今夜のうちに駿府に向い、一日も早く江戸へ馳せ帰って、この旨を牛込の先生へ申上げるとしよう」
「然るべく御披露を願い度い、五貫目玉、五十丁撃の大筒は間違いもなく作り上げ、駿府へ二門、江戸へ五門、京都へ二門、船積にて送り届けることと致そう」
「日限は」
「多分九月の初め――八月中には一門だけ見本を造り、この山上にて試し撃をいたすとしよう、その間に地金の用意、万端お頼み申すぞ」
「心得申した」
「さらば」
三四人の武士は、縄付の半十郎を濡れ縁に差し置いたまま、謎のような問答を交して何処ともなく立ち去ってしまいました。
貴公の大筒俺の焔硝
「井上半十郎、久し振りだなア」
残る庵の主人は、雨戸を一枚押し開けて、灯の中へ顔を持って行ったのです。