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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
Read 江戸の火術 (えどのかじゅつ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,929 characters · 36 screens
但し井上家は代々江州鍛冶の名家で、外記は井上流砲術の祖と言われた人物、一方稲富喜太夫は、有名な稲富一夢斎の嫡流で、これも砲術の方では海内屈指の名家です。
公儀に於かせられても、この両名家の断絶を惜んで、五ヶ年を限って、両家争いの元なる五貫目玉五十丁撃の術を磨かせ、将軍御前に技を闘わせた上、五貫目玉五十丁撃に成功した者に、家名再興を許すという内意があったのです。
外記の倅井上半十郎と、喜太夫の子稲富喜三郎は、父親同士の争が表沙汰になる迄は、何んにも知らずに、水魚の交りを続け、その上、喜三郎の妹繁代は、半十郎の許婚になって居たのですが、親同士が殺し合うような事件が起ってからは、友情も恋も滅茶滅茶。稲富喜三郎兄妹の行方は、それっきり杳として判りませんが、井上半十郎の方だけは、父祖の墳墓の地、江州国友村に隠れて五年間、井上流砲術の完成に若い命を打込んだのでした。
「斯様なわけ、――五年目の九月十三日までは、余すところあと二た月、父井上外記が丹精した井上流砲術の秘巻に、拙者五年の間の研究を書き加えたのが、この振り分けの荷物の中に入って居る、この荷物が身にも世にも替えられぬと申したのが無理であろうか」