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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Read 江戸三国志 (えどさんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 577,271 characters · 1141 screens
「おやじ」
と、権太夫をよんでたずねました。
「この川越の城下には、もっと、繁華な所はないのか」
「は。御意遊ばすのは、あの下民どもの寄る盛り場の儀で」
「そうだ、その盛り場へ駕をやッてくれ、万太郎は下民の仲間入りをするのが大好きでな」
権太夫は眉をひそめながら、
「したが、御身分がら、ああいう場所へお近づき遊ばすのは、あまりよろしくございますまい」
「では、次郎だけ連れて歩いて行こう」
と、遂に駄々な七男坊は、駕の中から片足を出して、
「河豚、草履をくれ」
と、不機嫌にいいつけます。
権太夫も呆れましたが、ぜひなく万太郎の御意のまま、駕は城下の盛り場に曲げられました。
さて、そこの賑やかな町といっても、江戸の両国や浅草とは比較になりませんが、古着や繭市の立つ町角を中心に、鄙びた遊び風呂屋が何軒か見え、附近には雑多な食べ物店や、楊弓場や、露店、見世物、辻講釈などがあって、その騒音が城下の町人や仲間や、行きずりの旅人の足をも相応に集めております。
そこへお練りの御家老と駕です。
権太夫と用人の河豚内が、むずかしい顔をならべて、駕の後から真ッすぐに向いて歩いていると、万太郎は駕の垂れを上げて、