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ふどうするちか
浮動する地価
黒島 伝治
Read 浮動する地価 (ふどうするちか) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,079 characters · 29 screens
八
よなべに作る藁草履を捨てゝ地下足袋を買えば、金がいる。ポンプも、白熱燈も、親玉号も、みな金だった。その割に、売る米の値は上るどころじゃなかった。そこで、土地土地土地と、土地を第一に思っていたおふくろが、ぼれたなりに、今度は銭銭銭と、金のことばかりを独りごとに呟きだした。
八
「孫七」の娘のお八重が、見知らぬ男と睦まじげに笑いかわしながら、自動車からおりて来た。
情夫かと思うと、夫婦だった。
「太助」のお政も、その附近の者の顔ではない、別のタイプの男をつれて帰って来た。
素性の知れた、ところの者同志とでなければ、昔は、一緒にはならなかった。同村の者でなければ隣村の者と。隣村の者でなければ隣々村の者と。そして、夫婦をきめるのは、自分でなく、やかましい頑固な親だった。
今は、町へ出た娘達は、そこで、でっくわした男と勝手に一緒になった。
村へちょっと帰って、又、町へ出かけた。
次に村へ帰る時、又、別の男と一緒になっていたりした。人々は、それを当然のように思っていた。見てもなんにも云わなかった。
田舎に居っても、時が移り変っていることは感じられた。
昔流の古るくさいことばかりを守っている者は、次第に没落に近づいていた。