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ふどうするちか

浮動する地価

黒島 伝治

Read 浮動する地価 (ふどうするちか) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,079 characters · 29 screens

Aozora Bunko

それだのに親爺は、まだ土地を買うことをやめなかった。熊さんが、どこへ持って行っても相手にしない、山根の、松林のかげで日当りの悪い痩地を、うまげにすゝめてくると、また、口車にのって、そんな土地まで、買ってしまった。その点、ぼれていても、おふくろの方がまだ利巧だった。

「そんな、やちもない畠や田ばかり買って、地主にでもなるつもりかい?」

僕は馬鹿々々しさと、腹立たしさとで、真面目に取り合えない気になっていた。

「地主にゃこし、なれるもんか。たゞ、わいらにちっとでも田地を残してやろうと思うとるだけじゃ。銭を使うたら、それッきりじゃが、土地は孫子の代にまで残るもんじゃせに。」

親爺は、朴訥で、真面目だった。

「俺ら、田地を買うて呉れたって、いらん。」

「われ、いらにゃ、虹吉が戻ってくりゃ、虹吉にやるがな。」

「兄やんが、戻って来ると思っとるんか、……馬鹿な! もう戻って来るもんか。なんぼ田を買うたっていらんこっちゃ!」

信用組合からの利子の取立てと、頼母子講の掛戻と、女房と、息子の反対は、次第に親爺を苦るしくして行った。

三人が百姓に専心して、その収穫が、どうしても、利子に追いつかなかった。