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みなもとよりとも

源頼朝

吉川 英治

Read 源頼朝 (みなもとよりとも) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 306,118 characters · 613 screens

Aozora Bunko

五

「それ故に、なお」

「だまれ。――兄の鎌倉殿は、愛すればこそ、この義経を、公然とお叱りになったのだ。愚かなわしは、その大愛が、すぐ胸に溶けなかったために、酷いお仕打! 衆人の中で、恥辱をお与えなさるかと、咄嗟には、むっといたしたが……よう考えてみれば、罪はわしにある」

「な、なんの科が」

「誰にも云わなかったが、おまえはわしの巣立ちの親だ。おまえにだけは云う。……聞いてくれ」

「はいっ」

「わしは常々兄の鎌倉殿へ、よい顔を見せたことがない。――黄瀬川の宿で、初めてお会いして、手を取り合って泣いた時以来は」

「どういうわけで」

「まあ聞け。……兄はすでに群臣の上にある顕然たる時の盟主。兄の一指一眄は、世をうごかすものだ。たとえ兄弟なればとて、ゆめ狎れてはならぬ。私の情愛をもって、兄の大志を紊してはならない。……と、戒めながらも、人間は愚か、つい、骨肉のお方と思う。日常の礼儀、形は慎んでも、心のどこかでは、つい、甘えたり、不平を思いやすいのだ。――臣下の如くにはなりきれぬために」

「ぜひない事でございましょう。――が、ご不平とは、いったいどういうご不平ですか」

「なぜ一日も早く、平家を掃滅し給わぬか。