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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
その光りは、夢の世界に漲っているそれに似て、色の褪せた、なんともいえぬ不思議な色合いであるが、はじめは天頂に落ちて、星を二つ三つ消したかと思うと、その輪形は、いつか澄んだ碧みを加えて、やがては黄道を覆い、極から極に、天球を涯しなく拡がってゆくのだ。
いまや、岬の一角ははっきりと闇から引き裂かれ、光りが徐々に変りつつあった。
それまでは、重力のみをしんしんと感じ、境界も水平線もなかったこの世界にも、ようやく停滞が破られて、あの蒼白い薄明が、霧の流れを異様に息づかせはじめた。すると、黎明はその頃から脈づきはじめて、地景の上を、もやもやした微風がゆるぎだすと、窪地の霧は高く上り、さまざまな形に棚引きはじめるのだ。そして、その揺動の間に、チラホラ見え隠れして、底深い、淵のような黝ずみが現われ出るのである。
その、巨大な竜骨のような影が、豆州の南端――印南岬なのであった。
ところがそのおり、岬のはずれ――砂丘がまさに尽きなんとしているあたりで、ほの暗い影絵のようなものが蠢いていた。
それは、明けきらない薄明のなかで、妖しい夢幻のように見えた。ときとして、幾筋かの霧に隔てられると、その塊がこまごま切りさかれて、その片々が、またいちいち妖怪めいた異形なものに見えたりして、まこと、幻のなかの幻とでもいいたげな奇怪さで