Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens

Aozora Bunko

地虫

一、紅い水母

一、紅い水母

大都市は、海にむかって漏泄の道をひらいている。その大暗渠は、社会の穢粕と疲憊とを吸いこんでゆく。その汚水は、都市の秘密、腐敗、醜悪を湛えてまんまんと海に吐きだす。ところが、どんな都市でも、その切り口を跨いだあたりに奇異な街があるのだ。

そこは、劃然と区切られた群島のようなもので、どこにも橋の影を落さぬ、水というものがない。影は影に接し、水はくらく、しかも海にちかく干満の度がはげしい。ぐるりは、ギラつく油と工場の塀で、まさに色もなにもないまっ黒な堀水である。

そんなわけで、もしも端れの一つに橋がなかったとすれば、その一劃は、腐泥のなかで、孤島のように泛びあがってしまうのだ。

都市中の孤島――私は、当然読者諸君がるであろう不審の眼を予想して、次のその実在を掲げることにする。

諸君は、荒川放水路をくだって行った海沿いの一角に、以前から、「洲蘆の居留地」と呼ばれる、出島があるのを御存知であろう。そこは、杭が多く海流が狭められて、漕ぐにも繋ぐにもはなはだ危険な場所である。水は、はげしく奔騰して、石垣に逆巻き、わずか、西よりの一角以外には、船着場所もない。