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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens

Aozora Bunko

また、それが、妙に自分とばかり通い合う、奇異な存在ではないかとも考えられてきた。

ところが、その翌日、前夜のうち逢痴に対する令状が発行されたとみえ、閉場を待つ私服の群が、観衆の中で鋭い眼を光らせていた。

いまや舞台は、三幕目砂村隠亡堀の場。

背後は高足の土手、上手に土橋、その横には水門、土手の下は腐った枯蘆、干潟の体である。干潟の前方は、一面の本水で、それが花道の切幕際にまで続き、すべてが、先代右団次そっくりの演出であった。

伊右衛門 よしなき秋山うせたばっかり、口ふさぎに大事の墨附、あいつに渡してこの身の旧悪。ハテ要らざるところへうせずとよいに南無三暮れたな。どりゃ、竿を上げようか。

しかし、伊右衛門は、まだ未練げに、凝っと浮きを見詰めていると、やがて髪毛がかかり、次に引き上げた櫛の歯から、一筋二筋と、もつれ毛を取り去る、指のしなだれ、その蒼白さ。

時刻も黄昏、所は十万坪隠亡堀、すべてが陰の極みである。

すると、おどろ怖ましい薄ドロにつれて、下手から、菰をかぶった一枚の杉戸が流れ寄る。

端には一塊の腐れ縄、そこに、蛙がひょんと跳んで、凝っと動かないのだ。