Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens
艇がしばらく進むうちに、潜航の電鈴が鳴り、検圧計に赤い電灯が点いた。そして機械全体が呻吟したような唸りを立てると、同時に、足もとの水槽に入り込む水の音が、ガバガバと響いた。
水深五米、十米――一瞬間泡がおさまると、そこはまさに月夜の美しさだった。
キラキラ光る無数の水泡が、音符のように立ち上っていって、濃碧のどこかに動いている紅い映えが、しだいに薄れ黝ずんでゆく。
すると、間遠い魚の影が、ひらりと尾鰭を翻して、滑べらかな鏡の上には、泡一筋だけが残り、それが花瓣のような優やかさで崩れゆくのだった。
水中にも、地上と同じような匂いが、限りなく漂っていて、こんもりと茂った真昆布の葉は、すべて宝石のような輪蟲の滴を垂らし、吾々はその森の姿を、いちいち数え上げることができるのだ。
そしてその中を、銀色に光るかますの群が、軍兵のような行列を作ったり、鯖が玉蟲色に輝いたりなどして、それが前方に薄れ消えるときに彼らは星を降り撒き、あるいは甘鯛が、えごのりの捲毛に戯れたりして、ときおり海草の葉がゆらめく陰影の下には、大蝦のみごとな装甲などが見られるのであるが、その夢の蠱惑は、しだいに水深が重なるとともに薄らいでいった。