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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Read 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 132,395 characters · 263 screens

Aozora Bunko

それに、傍線を引いて、フォン・エッセンに示したところをみると、何かそこになくてはならぬわけだろう」

「なるほど、辻褄は合うがね。だが僕は、君の云うような、安手な満足はせんよ。大いに出来ん。とにかく、もっと先を読んでみよう」

と、彼は頁を繰り、タラント軍港における、巨艦雷撃の個所を読みはじめた。

――一日の仕事が終って、きょうも日が暮れようとする。

余はわが艇を、アドリアチックの海底に沈め休息をとることになった。艇自身は、まるで寝床にいるような、柔らかな砂上に横臥している。天候は、穏やかである。砂上にある艇も、ユラユラ動揺することもない。

ところが、ふと、聴音器に推進機の響きが聴えてきた。

そこで、ふたたび浮揚し潜望鏡を出してみると、残陽を浴び、帆を燃え立たせた漁船の群が、一隻の汽船を中心に、網を入れつつある。

好餌――余の胸に、餓えた狼が羊を見るような、衝動がこみあがってきた。盲弾を放ったにしろ、たしか十隻はうち沈めることができる。ちょうど、射撃演習そっくりにあの汽船を撃沈すれば、燃料や食料品はしこたま手に入るだろう。

が反面には、潜航艇出没の警報が、風のように流布される懼れがある。