Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たはらしのはんざい
田原氏の犯罪
豊島 与志雄
Read 田原氏の犯罪 (たはらしのはんざい) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,957 characters · 57 screens
心が煮えくり返るようでね。そんな時に私は膝に抱っこしてやるんですがね、そして子守唄をうたうんです。すると大抵は二人で笑い出すんですがね。どうかすると奴さん泣き出しちまうんです。私もね、つい鼻を啜るんですがね。……いや火を燃すに限るですよ。泣くなんて余りいい気持ちのものじゃねえ。どうも泣くのはいけねえや。私はこう思いますがね、人間てものは始終火を燃していなけりゃいけねえと。」
「然しね、酒で火を燃さなくても、他のもので燃した方がいいよ。」
「そりゃ、旦那みたようだと、そういきましょうがね。私等には、うまくいかねえですよ。何しろ裸一貫ですからね。」
田原さんはじっと徳蔵の顔を見つめた。
「お前は家内を亡くしたのがいけなかったんだね。」
徳蔵はその言葉をきくと、急に腰を立ちかけたが、またそのまま身を屈めた。
「旦那、死んだ奴のことは余り考えるものじゃありませんね。」
その言葉は田原さんには非難の言のように響いた。で彼は何とも云わないで徳蔵の方をじっと見やると、徳蔵は殆んど無感覚のような没表情な顔をして、ぼんやり視線を向うの庭石に定めていた。
庭はもう一面に日が陰っていたが、傾いた太陽の光りを含んでぎらぎらと輝いている空からは、炎熱の余光が地上に降り濺いで、物の隅々まで影の無い明るみを作っていた。