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かみのごとくよわし

神の如く弱し

菊池 寛

Read 神の如く弱し (かみのごとくよわし) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,929 characters · 28 screens

Aozora Bunko

」と、続けた。

雄吉は、吉岡が不用意の裡に犯して居る自家撞着に、気が付かずには居られなかった。それと同時にそれに依って自分の取った態度を、更に肯定されたように思った。吉岡は、将来万一起るかも知れない不和の場合を恐れて、友人間の金の恵贈を、避けたらいゝと云うのだ。所が、河野とS家との不和は、ホンの僅かな可能性をしか、持って居ない将来の事ではなくして、厳として眼前に横わって居る事実なのだ。将来の万一の不和を怖れて、金の恵贈を避けると云うのなら、その何百倍何千倍の強さを以て現在の不和のために、金の恵贈を避けるべき筈ではないかと思った。

憎んで居る相手から、金を受けると云うことは、恩恵や厚意を受くることでなく、一つの侮辱を受くることではないかと思った。

吉岡も本心では、此の申出の不合理に、気が付いて居るのだが、S家に対する義理の為に、仕方なく行動して居るのだと思った。

そう思うと、雄吉は瀕死の友人のために、万人が認めて正当とする処置を取ったのだ、と云う確信と、それから来る満足とを持たずには居られなかった。

×

その中に、河野はだん/\恢復して行った。