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かみのごとくよわし
神の如く弱し
菊池 寛
Read 神の如く弱し (かみのごとくよわし) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,929 characters · 28 screens
二
自分達の河野の生活に対する非難が、こうした偶然の出来事に依って、代弁されるようにさえ思った。無論、河野の放恣な出鱈目な無検束な生活が、直接には発病の因を、成しては居なかったろう。が、雄吉は、若し河野が一月ほど前に、細木や藤田などが与えた苦言を幾らかでも聴いて、もっと慎ましい秩序のある生活をして居たならば、こうした危険な病勢などを、未然に防ぎ得ただろうと思わずには居られなかった。
『あの忠告は、本当に時宜的忠告だった。今度のことで、少しは思い知るがいゝ。』と雄吉は思って居た。
二
お互の感情が、どんなに荒んで居たとしても、それは、河野が壮健で跳ね廻って居る時のことで、生命の危険さえ伴って居る病気になっては、見舞に行かないと云う訳には行かなかった。
鳥井の結婚式が済むと、雄吉は細木と連立って、下谷の河野の家を尋ねた。
取次に出た河野と同じように人の好いお母さんの真蒼な顔には、背負い切れぬ心配が、満ちわたって居た。二三日櫛を入れないらしい髪のほつれ毛が、一層この年とった母親を、いたましく見せて居た。子供の危い生命を、全身で縋りついてでも、取り止めようとするような此の母親の姿を見ると、雄吉は悲哀と敬虔と尊敬とが、交って居るような心持で、いた/\しく見詰めずには居られなかった。