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かみのごとくよわし
神の如く弱し
菊池 寛
Read 神の如く弱し (かみのごとくよわし) by 菊池 寛 (きくちかん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,929 characters · 28 screens
河野と同じように、無資産の貧乏人である雄吉は、細木や吉岡などよりも、河野の心持はよく判った。失恋と同時に、凡てに元気を失った彼には、付物である物質上の不安が、何時よりも猛烈に、感ぜられて居たのだ。その不安を取り去ることは、失恋に対する対症法ではなくとも、彼の心持を、少しでも軽くする事に依って、間接に幾何かは、彼の苦悩を癒するものと信じて居た。雄吉のそうした考えも、一時は誤って居ないように見えた。
『僕は、新聞小説をかいた事によって、やや救われたと云っても、いい位だ、あの頃の友達の忠告の中では、君のが一番適切だった。』と、河野は後になってから、雄吉に感謝の意を洩したこともある。それに対して、雄吉も内心多少の得意は感じて居た。それだのに、河野の生活が、此頃のように放埒になってからは、宛もその原因が、新聞小説をかいた為に得た比較的豊かな、物質上の自由にあるように解釈されて、従ってそれを書く事を勧めた雄吉迄が、細木などから軽い非難の的になって居た。その事も、雄吉としては、快い事ではなかった。
その上、その頃は雄吉の知人で、同時に河野を知って居る誰かに逢うと、その人はきっと河野に対する報告を、聞かせて呉れた。