Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens

Aozora Bunko

否めば生きていられぬ畏怖は男たちの生き方にも変りがない。それもただの庶民ならばだが、そのご巷に聞えた五大院宗繁の噂だけは、ゆるせなかった。彼女は憎んだ。

五大院宗繁という侍は、生前の高時には、ずいぶん厚く用いられ、二位殿からもまたなき者と愛されていた。さればこそ万寿君の身をゆだねられて落ちたのだろうに、近ごろ、我慾に目がくらんで、新田義貞のもとへ密訴して出た。

義貞は仮借なく、すぐ船田ノ入道をさしむけて、わずか九ツでしかない万寿を、相模川のへんで首斬らせた。また、これに味をしめて、

「高時の子は、も一人いる」

と、新田方では、さらに弟の亀寿(後の北条時行)の行方を、八方、重賞を懸けていま、詮議中との評判だった。

「……でも。その高札が、私の力になりました」

棗は言った。

無残な鎌倉の焦土が、ひとりの乙女のなかに、こんな不敵な眸を作っていたかと、怪しまれるような強さで、

「……生きよう。生きぬいて、兄の盛高のところへ行き、亀寿さまをお育てして、もいちど、鎌倉へ帰ってみせる。そういう気もちになったのです」

と、怯みなくいうのであった。

「盛高とは?」

和氏がたずねた。