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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens
尊氏と成る
とまで言った。
義貞はすっかり酔った。――会ってみれば、何のことはない、二人は盟軍の盟友だった。こんなにも自分の真価を知っている高氏が――と、今さらのように見直されて、夜更けるまで、飲みあった。
この間にも、彼は、明日発表になるという恩典の内容に話を触れてみたかったが、おくびにも自分からは問わなかった。また高氏もいわなかった。あくまで武辺話に終始した。また未来の夢をかたるに終った。そしてやがて深更、五条大橋の風に酔面を吹かれつつ、義貞はここちよげに、二条烏丸へ帰って行った。
尊氏と成る
「聞いたか。おい」
「なにを」
「なにをって。軍功の恩賞沙汰が、いよいよ、朝議を通ったというじゃないか」
「それだ。それを今、おれもあちこち聞き歩いてみたのだが」
「わからぬのか」
「皆目だ。発令とだけで、内容はまだたれにも分らぬ。高札布令に出るわけでもないからな」
「では、恩賞の授与は、一体どういう形で出されるのか」
「勲功にも、第一、第二、それ以下の輩まで、たいへんな数だろうから、とても一時に沙汰書も行きわたるまい。――順次、記録所から各家へ宛てて、綸旨やら授与ノ状が届けられようと、いわれておる」