Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Read 私本太平記(五) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 252,330 characters · 505 screens
卑劣な武士、抜け目ない田舎武族までが、
内密の秘計によつて
昨日までは朝敵でありつる身も
また、さらに忠なき輩も
五ヶ所、十所の所領を賜はる有様なれば……
とあるのも、一概に否定はできない。先に正直者の万里小路藤房が、厭世的な気鬱に負けて、恩賞局を辞し去った気もちもわかる。そのひどさは「梅松論」なども、
天皇の側臣
随時に秘奏をへて
非義を申し行ふため
綸旨
朝に変じ、暮に改まるほどに
諸人の浮沈
掌を返すがごとし
とまで、痛言しているふうだった。
なにしろ、想像もおよばぬほどな、裏面運動と、土地餓鬼のあばき合いではあったらしい。――またそれの受け入れ態勢もおよそ乱雑でお粗末な政治機関であったようだ。――なにしろつい昨日までは、式部官とか神祇官であった公卿が、一朝、天皇親政の謳歌にのって、“俄か政務官”となったのだから、なんら行政的手腕があるわけでもない。事務の渋滞はもちろん、裁決のまちがいなどもたびたびで、ただもう、てんやわんやの新政だった。
すると。朝に夕に、綸旨が変るような乱脈さを見すかして、たちまち、偽綸旨が流行り出した。恩賞の偽地券に、天皇の名を騙って、地方人の土地を欺きとる悪党たちが横行しだして来たのである。