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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Read 私本太平記(四) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 229,324 characters · 458 screens
「親分、怒ったんですかえ」
「怒りゃあしねえよ。ただこっちは、いぜんの好誼で、おなじことなら、てめえも共に、立身出世をと思っているのに、あいそッ気のねえ返辞をしやがるから、ついまずい面になったまでさ」
「すみません、親分」
「なにがよ」
「そうお気を悪くなさらねえでおくんなさいよ」
権三は腹巻をゆすぶッて、革の苞につつまれた一封の書状を出して示しながら、
「なにしろ、お見せしようにも、こう封蝋がしてありますんでね」
「いいのかい」
「へ。どうぞ」
言った下から。
「あっ親分」
「なんだよ、おれの手を抑えやがって」
「封蝋を破ッちゃいけませんよ。権三の首がなくなります」
「なんでえ、その泣きッ面は。もうまにあわねえよ。封蝋は破ッちまった。……だが、てめえの首はおれがスゲ替えてやるから心配するな」
無造作に、大蔵は股ぐらのうえに、中の物をひろげだした。
一ト綴の書類と、一札の書面で、
忍ノ者支配、本庄鬼六
と、裏にみえ、
名越遠江守どの御床几へ
と宛ててある。
綴じ書の七、八枚はすべて鬼六が配下にさぐらせて蒐めた千早、金剛の貯水池の図や埋樋(隠し水の水路)の資料であった。
ゆらい敵の金剛山には、