Japanese reading practice

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ぬすむおんな

窃む女

黒島 伝治

Read 窃む女 (ぬすむおんな) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,734 characters · 18 screens

Aozora Bunko

山出しを頼むと一束に五銭ずつ取られるからである。

お里は常からよく働く女だった。一年あまり清吉が病んで仕事が出来なかったが、彼女は家の事から、野良仕事、山の仕事、村の人夫まで、一人でやってのけた。子供の面倒も見てやるし、清吉の世話もおろそかにしなかった。清吉は、妻にすまない気がして、彼自身のことについては、なるだけ自分でやった。が、お里の方では、そんなことで良人が心を使って病気が長びくと困ると思っていた。清吉の前では快活に骨身を惜まずに働いた。

木は、三百束ばかりあった。それだけを女一人で海岸まで出すのは容易な業ではなかった。

お里が別に苦しそうにこぼしもせず、石が凸凹している嶮しい山路を上り下りしているのを見ると、清吉はたまらなかった。

「ひまがあったら、木を出せえ。」彼は縫物屋が引けて帰ったお品に云いつけた。

「きみも出すか、一束出したら五銭やるぞ。」

姉よりさきに帰っている妹にも云った。きみはまだ小さくて、一束もよく背負えなかったが、

「一束に五銭呉れるん。そんなら出さあ。」

きみは、口を尖らして、眼をかゞやかした。

「出すことなるか?」

「うん、出さあ。