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はですがたまんねんわかしゅ

艶容万年若衆

三上 於菟吉

Read 艶容万年若衆 (はですがたまんねんわかしゅ) by 三上 於菟吉 (みかみおときち) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,800 characters · 67 screens

Aozora Bunko

世のたとえにも言う通り、三日見ぬ間の桜かな――散ればまだしも、朽ちた花びらが梢に萎れて、浅間しく風雨に打たれて腐ッてゆくさまは、世にも気の毒なものでござる。春夏の壮んな園のながめにも、落葉、凩の秋冬が来る。――花のいろはうつりにけりないたづらに、わが身世にふる眺めせしまに――千古の美人にも、この歎きがあるのじゃ、呉羽之介どの、そなたのその美くしさも、神ならぬ身のとこしなえではない。瞬間に尽きて行く美くしさゆえ大事になされと申すのだ」

呉羽之介は片里の言葉に聴き入りながらに机辺の花瓶の、緋いろに燃える芍薬の強い香りに酔ったような目付になりました。

この時露月は漸やく最後の一刷毛を入れてわれながら、満足したように画面を眺めましたが、やがて疲れ切ったように絵筆をぽんとほうり出して、うめくように呟やきました。

「わしには一生に又と、これよりすぐれたものが描けようとは思われぬ」

「オオ、出来上ったか!」

と、片里は、呉羽之介をみつめていた目を画面へと移し、限りない讃美の声をあげるのでした。

「なるほど、先程にくらべると、ほんの少し筆を入れただけで、また一しお見ちがえるまでになったなんという美くしさ、若々しさあでやかさ――まるでほんものの呉羽之介どのそっくりじゃ」