Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Read 花と龍 (はなとりゅう) by 火野 葦平 (ひのあしへい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 410,131 characters · 824 screens

Aozora Bunko

それを、また、裏から、二階にあげた。武器である。

梯子をかけて、石炭を入れた小籠を、天狗取り荷役の要領で、十個ほど、押しあげた。この作業は、お手のものだ。燃料用に貰った粉炭が、裏の箱に入れてあった。

「奴等が入って来たら、こいつで、眼つぶしを食らわせるんじゃぞ」

「六ゾロの源」が、金五郎に悟られないように、小声で、指示をする。

戦闘準備は、整ったのである。二階の明かりを消し、息を殺して待った。

大川時次郎は、胸を、どきどき、させていた。彼の心は、恐しい矛盾のなかで、錯乱する。

(もし、玉井金五郎が殺されるようなことがあったら……?)

その空想は、今は、時次郎に取って、地獄である。日とともに、強くなる金五郎への信頼感と、なお、あきらめきれぬマンへの思慕とが、からみあって、時次郎を呪縛する。それは、パナマ丸のとき、舷側を、猿のように、ロオプを伝って登る金五郎を見て、

(落ちれば面白い。落ちて死ねば、なお、ええんじゃが……)

と考えたときとは、心内の変化が段ちがいであった。

今では、金五郎に心服して、死ねばよい、とか、殺されればよいとか、考えたこともなかった。