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かつしかすなご
葛飾砂子
泉 鏡花
Read 葛飾砂子 (かつしかすなご) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,677 characters · 37 screens
それから菊枝に、病気揚句だ、夜更しをしては宜くないからお帰りと、こう言うのだ。汝またかりん糖の仮色を使って口上を忘れるな。」
坐睡をしていたのか、寝惚面で承るとむっくと立ち、おっと合点お茶の子で飛出した。
わっしょいわっしょいと謂う内に駆けつけて、
「今晩は。」というと江崎が家の格子戸をがらりと開けて、
「今晩は。」
時に返事をしなかった、上框の障子は一枚左の方へ開けてある。取附が三畳、次の間に灯は点いていた、弥吉は土間の処へ突立って、委細構わず、
「へい毎度出ましてお邪魔様でございます、難有う存じます。ええ、菊枝さん、姉さん。」
二
「菊枝さん、」とまた呼んだが、誰も返事をするものがない。
立続けに、
「遅いからもうお帰りなさいまし、風邪を引くと不可ません。」
弥吉は親方の吩咐に註を入れて、我ながら旨く言ったと思ったが、それでもなお応じないから、土間の薄暗い中をきょろきょろとしたが、密と、框に手をついて、及腰に、高慢な顔色で内を透し、
「かりん糖でござい、評判のかりん糖!」と節をつけて、
「雨が降ってもかりかりッ、」
どんなものだ、これならば顕れよう、弥吉は菊枝とお縫とが居ない振でかつぐのだと思うから、笑い出すか、噴き出すか、くすくす遣るか、叱るかと、ニヤニヤ独で笑いながら、耳を澄したけれども沙汰がない